修繕積立金はいつ上げるべき?2026年ガイドライン対応の判断基準

家の話

マンションの修繕積立金について、「そろそろ上げた方がいいのかな」と心配しながらも、なかなか決断できずにいる管理組合の方は多いのではないでしょうか。
値上げの話は住民の皆さんにとっても負担が大きいですし、今すぐ困っているわけでもないので、できれば先送りしたいというお気持ちもよくわかります。

ただ、2024年以降の制度改定によって、状況が少しずつ変わってきているのも事実です。
修繕積立金は「いつか上げればいい」というものではなくなりつつあります。
この記事では、どのタイミングで判断すべきなのか、何を基準に考えていけばよいのかを、できるだけわかりやすく整理してみました。


まず確認していただきたい3つのポイント

細かいお話に入る前に、まずは次の3点を確認して下さい。
1つでも当てはまる場合は、修繕積立金の見直しを先送りするのが難しい状態かもしれません。

  • 修繕積立金が 1㎡あたり250円より低い
  • 今ある積立残高が、次回の大規模修繕工事費の7割に満たない
  • 管理計画認定を 取っていない、または取る予定がない

どれも当てはまらなければひとまず安心ですが、もし該当するものがあれば、「いつか考えよう」ではなく、次の総会で議題にするくらいの気持ちで動いていただいた方がよいかもしれません。


なぜ最近になって修繕積立金が厳しくなってきたのか

制度が「最初からしっかり集める」前提に変わってきた

2024年4月に、国土交通省が段階増額積立方式についての考え方を示しました。
簡単に言うと、将来の値上げ幅は最終的な積立額の1.1〜1.8倍くらいに収めましょう、という内容です。

これは裏を返せば、「最初をあまりに安くしておいて、あとから何倍にも値上げする設計は望ましくないですよ」というメッセージなんですね。
つまり、スタート時点の金額があまりに低い計画は、制度上も好ましくないと見なされるようになってきました。

修繕工事の費用は以前より高くなっている

2021年から2025年にかけて、建設資材や人件費の上昇によって、大規模修繕の費用は2010年代と比べて20〜30%くらい高くなりました。
外壁や防水だけでなく、足場代や現場監理費なども含めて全体的に上がっているんです。

正直なところ、今後以前の水準まで戻る可能性はあまり高くありません。
そのため、積立金を低いままにしておくと、工事のときに「内容を削るか、修繕一時金を集めるか」という厳しい選択を迫られることになってしまいます。

管理計画認定が、売却や購入に影響し始めている

管理計画認定制度では、修繕積立金が国土交通省のガイドライン水準を満たしているかどうかが大切なポイントになっています。

認定を受けられないと、フラット35の金利優遇が使えないなど、購入される方の住宅ローン条件が悪くなる可能性があります。
その結果、買い手が見つかりにくくなったり、値下げ交渉されやすくなったり、同じエリアでも価格差が出たりする形で、売却価格に影響が出てくるケースが増えています。

築年数が進むほど、話し合いで解決するのが難しくなる

築30年、40年を超えてくると、外壁だけでなく給排水管の更新、エレベーターの更新、電気設備の改修など、1回で数千万円かかる工事が必要になってきます。

段階増額方式は「そのときになったら皆さんで合意できるはず」という前提なのですが、居住者の皆さんの高齢化や収入状況の違いもあって、実際には後になるほど合意を取るのが難しくなるケースが多いんです。


国のガイドラインではいくらが目安なのか

国土交通省のガイドライン(2023年改定)では、マンションの規模ごとに1㎡あたりの月額修繕積立金の目安が示されています。2026年現在、これが「適正水準」として使われています。

マンションの規模平均(円/㎡)目安の幅(円/㎡)
20階未満・5,000㎡未満335235〜430
20階未満・5,000〜1万㎡252170〜335
20階未満・1万㎡以上255175〜335
20階以上(タワー)338245〜430

小規模なマンションほど割高になりやすく、タワーマンションは設備維持費が高くなる傾向があります。


段階増額方式と定額方式、どう違う?

段階増額方式は最初の負担が軽い代わりに、将来定期的に値上げが必要になります。
定額方式は最初から高めですが、その後は原則として変わりません。

段階増額方式の場合、値上げのたびに総会で議論が必要になり、トラブルも起きやすくなる傾向があります。
一方で定額方式は、初期の合意さえ取れれば後は安定的に運用でき、資産評価の面でも安定的と見られやすいという特徴があります。


もし放置してしまうとどうなる?

たとえば築35年・60戸で、修繕積立金が200円/㎡のマンションがあったとします。
段階増額を見送り続けた結果、給排水管の更新時に積立金が足りず、1戸あたり120万円の修繕一時金が必要になってしまいました。

この一時金は、ローンが組めない、ご高齢の世帯には大きな負担になる、未納・滞納が出やすい、という特徴があります。
結果として工事延期や内容縮小につながり、さらに資産価値が下がるという悪循環になってしまいます。


結局、何を基準に判断すればいいのか

修繕積立金がガイドライン水準(おおよそ250〜350円/㎡)を大きく下回っている場合、値上げは避けたいお話ではなく、必要な対策として整理していただいた方がよさそうです。

判断のポイントは次の3つです。

  • 積立残高は足りているか 、次回・将来の修繕費をまかなえるか
  • 管理計画認定が取れそうか、将来の売却や融資に影響しないか
  • 工事内容は現実的か、無理な先送りになっていないか

これらを踏まえると、修繕積立金は「上げるかどうか」ではなく、「いつ、どの水準まで合わせていくか」を考える段階に入っているのではないでしょうか。


総会で使える言葉

値上げのお話を切り出すのは勇気がいることだと感じられるかもしれません。
たとえばこんな言い方はいかがでしょうか。

「値上げは確かに負担ですが、先送りすると修繕一時金という、もっと重い負担になってしまいます。今は金額の問題というより、将来の選択肢を守るためのお話なのではないでしょうか」

修繕積立金は、今は見えなくても確実にやってくる将来の出費に備えるためのものです。
制度が変わった今、「そのうち考えましょう」では済まなくなってきています。
次の総会で、一度皆さんできちんと話し合ってみてはいかがでしょうか。
お一人で抱え込まず、専門家の力も借りながら、より良い選択をしていただければ幸いです。

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